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朝食を終えると乃亜のスマホが鳴った。
「げっ…父さん」
画面を見て渋々『通話』をタップする。
『お前は何をしでかしたんだー!!』
という、怒鳴り声がハンズフリーにしなくても、部屋中に響く。
『今日のお見合いは西園寺側からキャンセルになった!!帰ってきて、状況を説明しないさい!!』
涼が、スマホを渡すようにと、乃亜に手を差し出した。
乃亜は「?」と思いながらも、父の怒鳴り声が響くスマホを涼に渡す。
「昨夜、お電話を差し上げました、東郷の秘書の成宮でございます。本日ご自宅まで乃亜様をお送りいたしますので、その際にでもご説明させていただきます。後ほどお伺いいたしますので」
とだけ、早口で言って、ブツッと通話を切った。
「これでよろしいでしょうか?」
と、乃亜にスマホを返す。
乃亜は呆気にとられながら、頷いた。
「やはり、お1人で帰すのはまずい状況になっていますね」
乃亜は暗くなったスマホの画面を見つめたまま、
「でも、今夜はゆっくり眠れそう」
と、呟いてホッと安堵する。
***
後日、乃亜の話によると。
西園寺のお見合いドタキャンは、パーティで乃亜が一緒に東郷とダンスをし、注目を浴びたのが気に障ったらしい。
しかもパーティの途中でΩのフェロモンが漂っていた。それは東郷と乃亜がダンスをしたからではないか?しかも、その後、乃亜の姿がパーティ会場から消え、東郷の部屋に泊まったという噂が広がっていた。
パーティ会場でのフェロモンは蒼のもの。だが、確かに蒼を連れ出して、付き添って泊まってしまったので、事実と言えば事実だし、違うと言えば違うし…。という状況なのだが。
最近は何かと東郷グループに負けている西園寺グループにとって、お見合い前日に…!ということが面白くなかったらしい。
乃亜は父親に激怒されるが、涼の説明により事態はあっさり収束した、とういことだった。
***
ホテルで別れ際、不安そうな顔をする蒼を、乃亜は、
「なんかあったら連絡してこいよ。相談くらい、乗れる」
と言って抱きしめた。
「うん…、ノア、いろいろと…ありがとう」
蒼は精一杯笑おうとしたが、どうしても顔がひきつった。
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