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1章-5 夢うつつ
「自分の状況がよくわからないまま、私が一緒に居るのは怖いだろうから、別の所へ行く。貴良、しばらく蒼を頼む。落ち着いたら、ゆっくり今後の話がしたい」
東郷が自宅として使っているマンションに用意した蒼の部屋に入ると、身悶える蒼をベッドに降ろし、なんとか体を引き離す。
「後は頼む…」
と言って、理性を振り絞ってマンションを出てホテルへ向かった。
即効性のα用抑制剤は1週間以上空けて使わないと心臓に負担を掛ける。使い過ぎるなと南川に言われていた。
しかし、その強力な抑制剤を東郷はもう1度、自分の腕に打った。
Ωのフェロモンにここまで欲情させられたことはない。いつも自分の理性で押し殺してきた。こんなラット状態になるなんて…やはり蒼は自分の運命なのだと感じさせられる。
スーツを脱ぎ捨て、バスルームで冷たいシャワーを浴びる。体の中から込み上げる熱を自分で扱き上げて放出する。蒼の手にすっぽりと収まってしまう小ささを思い出すと、自分の中心で猛るモノの大きさが嫌になる。しかも根元は最上位αの象徴ともいえるノットが膨らんでいた。
――こんなモノ…すぐにぶち込めるわけないだろう!
蒼に挿れたい衝動と戦う。
白濁の放出が止まらない。
αがラット時に出す精子の量は通常の5倍とも10倍とも言われている。竿を挿し込んだ後、抜けないようにノットという瘤が根元で膨らみ、20~30分かけて、そこから大量の精子を出すことで、確実にΩを孕ませる。
発情したΩを相手にラット状態になると、理性のコントロールが効かず、本能のままにこんな状態で体を重ねてしまう。
――発情した蒼の側に自分が居てはまずい…。せめて、蒼が自分の性を受け入れてから…。
自分に言い聞かせる。
なのに、頭は冷静になるどころか蒼の上気した顔や、項が目に焼き付いて、咬みたくなる。
たまらず東郷は、自分の腕を噛んだ。
「フーッ、フーッー、フーッ!」
鼻で荒く息を吐くと、腕からうっすらと血が滴る。
冷たいシャワーに流され、足元で赤と白が混ざりあって排水溝へと流れていった。
蒼はベッドの上で泣き叫びながら身悶えていた。
下半身が疼いてたまらないのに、東郷に抱かれたいのに、
――居ない!
――自分を引き取って面倒を見たいと言ったのに出て行った!!
貴良はそんな蒼のズボンと下着を脱がせ、
「αが毎回必ずヒートを慰めてくれるわけではありませんよ。番が居ても居なくても、自分でどうにかしなければならない時もあります。Ωとなったからには自慰くらいできるようになりましょうね」
と、諭す。
「あら…可愛らしい…」
蒼のモノを見て、今朝の乃亜との会話を思い出し、ついつい言ってしまった。
いやいや、のんきに鑑賞している場合ではない。
小さくとも、今にもはちきれそうになって、透明な蜜を先端から光らせていた。
蒼を横向きに寝かせて背中を丸めると、「手を貸して」と手を取って握らせる。
「強く握り過ぎてはいけませんよ。ここをこうやって…、いいように動かしてみてください」
「そうそう…」と、貴良に優しく導かれる。
「ウッン…ウッン…ウンアッ…、アッ、アッ!」
先端から飛び出したものが、蒼の手と貴良の手に絡みつく。
「まだ、出せますか?」
「ハッ…ハッ…ハッ…」
荒い呼吸を繰り返して、蒼は首を振った。
貴良がティッシュでやさしく拭き取ると、蒼の背中をさすりながら、
「上手ですよ。苦しかったら、何回でも抜いてください。溜め込むと辛いですからね」
と、なだめる。
病院であれだけ泣かないように耐えてきたのに、堤防が壊れたかのように蒼は声を上げて泣きじゃくった。
貴良はただただ、蒼が泣き疲れて眠るまで背中をさすり続けた。
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