1章-7 ぶつかる

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 初めて感情をぶちまけて来る蒼に、一馬の中で『蒼はまだ子どもだから…』と抑えていた感情が弾け飛んだ。  腕を掴まれ、引き寄せられると、たやすく持ち上げられ、一馬のがっしりとした肩に軽々と担がれてしまう。  向かう先は、一馬の寝室だった。  一馬にベッドに放り投げられ、両手を頭上に上げて手首をガッチリと抑えつけられる。 「そうやっていつも私に気持ちをぶつけろ。強がって平気な振りなどいらない」  一馬の鋭い視線と、蒼の精一杯の抵抗を見せる視線がぶつかり合う。 「高校生でΩである今のお前に何ができるというのだ?私に囲われるのが嫌なら強くなれ、力を持て。会社も財産も自由自在に操れるくらいの人間になってみろ」  一馬から逃げようとバタつかせる蒼の脚に跨って、完全に動けないようにすると、 「今のお前をそこら辺に野放しにしてどうなるかわかるか?人さらいに捕まって、売り飛ばされて、知らないαの玩具になるのがオチだ。なら私のペットの方がマシだろう?」  と、冷たく言い放つ。  一馬の低い声が体の奥まで響いてくる。 「お前はΩだ。次の発情期が来れば、お前がいくら理性で拒絶しても本能はαを求める。選べ。見ず知らずのαに犯されたいか?俺に快楽を与えられたいか?」  それでも蒼は、体をよじり逃げようと藻掻く。体格が違い過ぎて逃げられないというのに。 「私を選べば、身の安全も保証され、大学へも進学できる。発情期に熱を持て余しても鎮めてもらえる。私の全てを受け取れ。利用することになんの不満があるのだ?」  一馬の鋼色の虹彩に縁どられた瞳の奥に引き込まれそうになる。  蒼は自分の力の無さが悔しくて唇を噛んだ。悔しくて悔しくて血がにじむ。  その蒼の顔を見て「…ッ!」と、一馬が舌打ちをすると、パジャマの裾を捲り上げて胸をさらけ出し、蒼の乳首を甘噛みした。 「ッア…!」  蒼はたまらず唇を噛むのを止めて声を上げる。  一馬はすかさず、蒼の唇に吸い付いた。血の滲んだ唇を舐めると、一馬の口の中に鉄サビのような匂いが広がる。  それでも抵抗を止めないので、一馬はねっとりと糸を引きながら唇を離し、耳元で囁く。 「…そうだな。1回抱いてしまえば、Ωの自覚も湧くか?」  一馬の大きな手で蒼の両手首を抑えると、空いている方の手で蒼の下半身に身に付けていたもの全てを奪い取る。 「イヤ!やめて!!ヤダ、ヤダ、ヤダ…!」  一馬の言葉に、恐怖を感じた蒼が必死で抵抗する。  だが、一馬の大きな体にしっかりと抱きしめられ、長い脚に絡まれると、逃げたくても逃げられない。  スーツを着ると気痩せするのか、一馬の肩や背中にはしっかりと筋肉がついていた。  忙しいのにいつ鍛えているのか…。αだからなのか?筋肉の付きにくいΩとは全然違う体格…。  一馬の手が背中から腰を滑り、双丘に伸びる。さらにその手が左の太腿まで下りてきて、膝をすくい上げると、一馬の肩にかけた。そして、蒼の腰の下にクッションを差し込むと、右脚も大きく広げる。  普段人目に晒すことのない部分が、一馬の前にさらけ出され、ヒクヒクと震える。  先週初めてヒートを起こしたときは、小さくそそり立っていたモノも、恐怖のあまりさらに小さく縮んでいる。  その恐怖に縮んだ竿に優しく触れると、蒼の体がビクッと痙攣した。    左脚を抑えているだけで、他は自由になったが蒼は抵抗することをやめた。体格が違い過ぎて太刀打ちできない。  目に涙を溜めながら一馬をじっと睨んでいる。  泣くものかと堪えても、一馬の手によって捏ねられ刺激されると、涙が目尻からこめかみを伝う。 「ハウッ…!」  嫌なのに与えられる刺激に反応して、縮んでいた中心がそそり立つ。それを一馬は握り、ゆっくりと(しご)く。  衣類や部屋に染み込んだサンダルウッドとパチュリを混ぜたような深い香りよりも、一馬の体から直接立ち上るフェロモンは、ベルガモットのような柑橘系の爽やかな香りを強く感じる。爽やかな香りは早くに消え、深みのある香りが残りやすいからなのだろう。  その香りに、理性が抵抗しても、本能が快楽を求めて、頭の奥が痺れる。 「体は素直だぞ。その強がりはどれくらい持つんだ?」  睨んでいた蒼の目がだんだん惚けてきたのを感じながら、一馬は脚を抑えていた手を離し、人差指と中指を舐めた。  それを曝け出されてヒクついている孔にゆっくりと挿し込む。 「アアアアー!!」  その瞬間、蒼は叫び身をよじりながら頭を左右に振った。  いきなり2本も入れるなんて…。 「発情期が終わったばかりだから大丈夫かと思ったが…キツイな」  と言いながら、指を奥に進めていく。  前側の内壁のコリコリとしたところを確認し、指先で掻くと、 「そこっ!アッ!ヤッ!!」  と、蒼が絶叫して体をのけ反らせた。 「ここが感じるのか…?」  地中に埋まっていた宝物でも見つけたように、一馬が大事そうにゆっくりと内壁を掻く。優しく掻けば体を震わせ、少し力をいれれば前の竿の先端から蜜を垂らす。 「ンアッ…アッ…ダメッ…ヤッ…アアンッ……」  ローマンカモミールのような甘い蒼のフェロモンの香りが、一馬に引きずり出されるように寝室いっぱいに広がる。 「アッ!出るっ!!」  と言うのが早いか遅いか、蒼の中心から白濁が溢れる。  一馬は唇の端に笑みを浮かべて、蒼の顔を覗きこむ。 「どうする、蒼?ここで止めるか?最後までやるか?」   ――こんな状態にしておいて、ここで止められるのか?!  蒼は一馬の与える快楽とフェロモンでクラクラしているというのに、一馬は自分のフェロモンを嗅いでも平気だというのか…?  抵抗できない…。無理だ…。  自分はΩで、目の前にいる強いαが欲しい…。  (あらが)いたくても、従うしかない…。  欲しい…。これ以上の快楽が欲しい……。
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