1章-10 前へ…

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 自宅マンションに戻り、ソファに座って一息つくと、一馬は蒼の頭を引き寄せて、髪の毛をクシャクシャと梳いた。  蒼は一馬の膝の上に跨り、白いYシャツの胸元に顔をうずめ、一馬の匂いを胸いっぱいに吸込む。冷えきった頭の中にお湯が染み渡るかのように、温かくなっていく。  あんなに突き刺さる言葉を投げつけられたのは初めてだった。これからも、あんな言葉を言われるのであろう…。  でも、一馬が側にいれば大丈夫…と、不思議な安心感があった。 「すまない。今日は嫌な思いを沢山させたな」  蒼のツヤツヤとした黒髪に頬ずりをして、優しく抱きしめた。 「祖母は祖母で…ああでも言わないと自分を支えてはいられないんだよ。いただろ?Ωの女性が1人。他に亡くなったけどもう2人愛人がいた。祖母の子どもは私の父だけで、あとの叔父叔母はみんな、愛人に産ませた子ども。愛人がポンポンαを産んでいく中で自分はやっと1人αを授かったのに、その一人息子までΩと失踪してしまった。自分の優位性を主張していなければ、生きていられなかったのだろう…。…かと言って、蒼を侮辱していいという話ではないがな。困ったもんだ」 「番になれてもなれなくても…一馬さんの期待に応えます。僕にはここで生活するしかないのだから…。だから、僕のことは気にしないで、結婚相手を探してください」  一馬の優しさと渋さが混ざりあった香りに包まれて、蒼はホッとしながら東郷家の屋敷で覚悟したことを口にする。  それを聞いた一馬が、驚いて蒼の体を引き離した。そして、ソファに押し倒し、口を激しく吸い、舌で蒼の口内を愛撫する。  突然の激しさに蒼は目を瞬かせる。  ゆっくりと唇が離れると、一馬は蒼の目をじっと見つめて、 「私がお前以外の相手と、こんなことをしていても平気でいられるのか?」  蒼は答えない。一馬の冷徹な無表情とは裏腹に、蒼を見つめる鋼色の瞳の奥が熱く燃えているようだった。 「私は……蒼が誰かに口を吸われ、押し倒されて組み敷かれたら…許せない」 ――えっ?!いや、それ、僕が好きって言ってませんか?違うの?恋愛結婚の願望は無いって言っていたじゃないですか?!それはαの独占欲?独占欲と恋は違うの?  蒼のやわらかなフェロモンが漏れ始める。  それに煽られるかのように、一馬の香りもゆっくりと混ざり始める。  ソファの上で押し倒されたまま、ネクタイを解かれ、Yシャツのボタンを一つ一つ外される。首筋に吸い付き、そこから舐めるように降りて乳首を吸い、甘噛みをしながら、ズボンのベルトに手を掛ける。  蒼は一馬の手によってあっさりと、下着1枚の状態にされてしまった。    発情期ではないものの火照って熱くなった体を軽々と抱き上げられる。  下着姿のまま一馬の寝室のベッドに放り投げられた時には、下着の中心がしとどに濡れていた。 「ふふっ、これくらいで興奮しているのか?」  放り投げられてモジモジしている蒼の姿を愛おしそうに見下ろしながら、スーツとYシャツを脱ぎ捨てる。  蒼と同じように下着1枚だけの姿になると、中心が既に収まりきらないくらいに猛っているのがわかる。 「あ…、あっ…」  蒼はそれを見ながら、期待と興奮がこみ上げるのを抑えつつ、恥じらって後退りする。  逃げるつもりはないのだが、そんなのを挿れられたら、また自分は理性を失くした動物のようになってしまう…。 ――怖い…。でも、欲しい。  相反する気持ちが渦巻く中で、必死に自分を保とうとする。  一馬は蒼の両足を取り、引き寄せると、抵抗する間を与えずに最後の下着まで剥ぎ取る。そして、蒼の小さな竿が懸命にそそり立っているのを見て目を細める。 「…この、かわいいモノは……誰にもやらない」 「…ッ!?ヤッ…!」  蒼の脚腰を動けないようにガッチリと押さえつけ、ソレを口に咥えた。 「か…一馬さん!それ、イヤッ!!」  舌で舐め回される生暖かい快感が身体中を電流のように駆け巡る。いっぱいいっぱいに大きくなっても、舌の上で転がせてしまう大きさ。まるで飴玉でもしゃぶっているように弄ばれる。  前に意識が集中しているうちに、後ろの孔に指が入ってくる。押し広げるように人差指を入れ、ほぐしながら中指も入れて行く。入口を入ってすぐの前壁にあるコリコリとしたものを、優しく掻く。 「ンアアアアー!!」  中の感じるところを責められ、たまらず一馬の口の中へ熱を放出する。 「あぅ…、ごめんなさい…」  蒼が涙目になりながら、肩を震わせていた。放出しても、後ろに入れた指は離すどころか、執拗に中をかき混ぜる。  もう既に、蒼のポイントは抑えられていた。  一馬は顔を上げ、蒼が放出したものを飲み込むと、空いている手の甲で唇を拭い、ニヤッと笑みを浮かべる。 「強がって澄ましている蒼も、貴良や悠馬と楽しそうにしている蒼も、こうしてヨガッている蒼も…全部、私のものだ。私を選ぶも選ばないも、お前の自由だが、……私以外を選べないようにしてやる」  指を抜くと蒼の体をうつ伏せにし腰を引き寄せ、一馬の中心で猛るモノに薄い被膜で覆う。 ――来る!  蒼がビクッと体を震わせると、その双丘の割れ目にある孔に、一馬の熱く硬くなったモノがゆっくりと押し込まれる。 「私が、お前以外の相手と…、こんなことをしても…、平気なのか?」  蒼は返事をしない。  ただ、一馬がゆっくりと体の中に入ってくるリズムに合わせて、「アッ…、アッ…、アッ…」と喘ぐだけだった。  一馬のモノが全部飲み込まれると、ゆっさ…ゆっさ…と、優しく揺らす。  揺れる度に、蒼の頭の中は快楽で惚けていく。  時折、ガツンッ!と打ち込むと、再び小さく猛る蒼の頂から、熱い液体が(ほとばし)る。 「ほら、またこんなに漏らして…」  一馬の大きな手にギュッと握られ、親指で鈴口に蓋をされる。 「イヤ…、そんな…握っちゃイヤ…」  枕に額を擦り付け、泣きながら抵抗するも、快楽に溺れた体に力が入らない。 「こんなことをする私が嫌いか?だから、結婚相手を探せなんてことを言うのか?」  一馬の腰の動きが激しさを増し、パチュン!パチュン!と肉がぶつかり合う音が響き始める。 「お前の聡明さは罪だ。汚して、ぐちゃぐちゃにして、籠の中に閉じ込めておきたくなる…。私の元から飛び立てないように…」  蒼の耳元で囁くと、うつ伏せになって必死に枕にしがみついていた蒼の体を抱き上げ、下から激しく突き上げる。 「ンアー!!ンハッ、ハッ、ハッ!」  絶叫し、荒く息を吐いて、苦しさを逃そうとする。  出したいのに、一馬に握られたそこから放出したいのに、一馬はギュッと握ったまま放そうとしない。  蒼は、苦しくて、自分のモノを握っている一馬の手を外そうとするも、力が入らない。無論、力で敵う相手でもないのだが…。  蒼はボロボロ泣きながら、首を振って、手を放して欲しいと哀願する。  祖父母の前で、あんなにも気丈にふるまっていた蒼が、自分の与える快楽と苦痛で泣いている。 ――たまらない…たまらなく愛おしい。 ――もっともっと啼かせたい。  そう強く思うと、グチュグチュと水音を立てながら、わざと大きく腰をグラインドさせて、蒼を甚振る。  腕で腰をガッチリと抑えられているため、逃げたくても逃げられない。 「ンアアアアアアー!!」  蒼の絶叫が部屋に響き渡り、一馬の手を外そうとしていた手が離れる。  それでも一馬は蒼のモノを握る手を緩めず、さらにガンッ!ガンッ!と力強く腰を打ち付ける。  その度に、蒼の体はのけぞり、声にならない叫びをあげる。  そろそろ蒼が限界であることは感じる…。  感じるけれども、抵抗することも逃げることもできないくらいにしたい。ただ、自分だけを求めるΩにしたい…。  そんな狂気を一馬の心が占めていく…。 「一馬さん…もぉ…もぉダメ…も…ぉ…無理………」  泣きながら最後の力を振り絞って、自分のモノを握りしめる一馬の腕を掴んだ。 ――蒼…私から離れるな…!  一馬はとうとう被膜の中に大量の精を吐き出す。  ドクドクと自分の中からあふれる快感に、たまらず蒼の背中に吸い付く。  無我夢中で、蒼が気を失いかけていることに気付かない。 「一馬さん…もう……」  と、譫言(うわごと)のように呟いたかと思ったら、蒼がガクッと脱力した。    一馬は、ハッ!と我に返り、握っていたモノから手を放す。  ベッドの上に仰向けに横たえると、前からも後ろからも、ドロドロに液体を流し、気を失っていた。  バスタブにお湯を張り、ベトベトになった体を洗ってやると、きれいな下着とパジャマを着せて、一馬のベッドに寝かせた。  親戚の顔合わせでの疲れもあったのか、起きる気配はまるでない。    抱き潰してしまわないように、発情期中に抱くことを避けたというのに、結局蒼を気絶させてしまったことに一馬は罪悪感を覚える。  α用の抑制剤を飲んでいても蒼にこれだけ興奮してしまうのなら、次の発情期にはどうなってしまうのだろう…?という不安が浮かぶ。  次に来る発情期には寂しい思いをさせないよう、込み上げる熱をうまく発散させてやろうと思っても、今の一馬には自信がなかった…。
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