130人が本棚に入れています
本棚に追加
第二章 ないない尽くしの世界
第八話 父さんはチーズ職人デス
すくすく育った私は三歳になった。
だいぶ割愛させてもらったが大した毎日ではなかったので差っ引いておこう。
ふん、ふん♪
水鏡に映る私は、天然パーマの栗色の髪、動くたびそれが跳ねる。
髪に白い花を挿した。
「似合うよね」
こんなことしたことがなかった、おしゃまさんなんて過去の世界なら言われただろうな、こんなかわいい子、自分で自分をほめてどうする。
でもカラコン入れたみたいな青い目、外人さんの高い鼻、そばかすも少しある。
ああそうか、キャンディキャンディ、もっと髪がカールしていたら似てるー。
「桶に穴が開くぞ」
後ろから声が来て振り返った。
アンソニーと呼びたくなりそう。金髪サラサラじゃないけど、金髪は無敵で素敵です。
髪を切るというのは難しいのか、私も兄も、おかっぱです。
長い髪は売れます、両親は伸ばしていますが、私たちは一年に一度夏になるころにバッサリと切ります。
子供の毛は柔らかいので長さよりは量みたいです。そういえば、向こうの世界で赤ちゃんの毛で筆を作っていたような…。
どこかに書いておかないと…。
今日は雨、父ちゃんも兄ちゃんも家にいる。それだけで楽しい。
天気が悪い時は、お仕事はお休みです、家の中やヤギの世話をしています。
ハイジと違うところは、両親が健在で兄がいること。ヤギは十匹もいて、外にはそれなりの大きさの畑もあります。
父さんはチーズを作る人です。そのためチーズの小屋があります。春、羊や牛が、いっぱいエサを食べに山の上の牧場めざし家の横を通っていきます。
夏、お腹の大きなヤギや羊のミルクでチーズを作ります。
できたものから小屋に入れ、最後のほうは、雪の中で熟成させるために、小屋をふさいでしまいます。ここは雪が数メートルつもる屋根の上から出入りしなくちゃいけないぐらい、天然の冷凍貯蔵庫になるのだ。
ヤギのチーズはそのまま熟成させるためかしょっぱくてねっとりしてるんだよね。
塩分取りすぎッて感じ。
チーズ作りがない時は、放牧の手伝いです。
お兄ちゃんは小さい時は父さんと一緒に山へ行くのでうらやましく思いました。
六歳になったので、今度はお兄ちゃんだけで行けます。
下からは、ヤギや羊を放牧する人が山を毎日のぼってきます。
犬もいます。
さほど天気が悪くなければ雨でも山へ行きますが、そんな時は父さんたち大人だけで行きます。
今日は、だいぶ強く降っていて、下から来る人もいないのでお休みです。
おもーい。
ふらふらしながら大きな斧を振り下ろした。
ガツン!
んー、なかなか目標物に―!
当たんない!
ガツン!
「なんの音?」
「外から、まさか!」
「またあいつ!」
三人があちこちから出て、私めがけ走ってきました。
「「「チャーム!!!」」」
軒下で大きな斧を振り回してあちこちにぶつけまわっているのです。目の前にある木を伐りたいだけなのですが…。
そして父ちゃんのゲンコツが飛んでくるのでした。
「ワ―ン!」
こんなんです、危ないだろうというのですが、みんな忙しそうだったからー!
「危ないでしょ!これは触っちゃダメ!」
「俺でも持てないのに―、メッ!」
「今度やったらお尻ぺんぺんだからな」
ゴメンなさーい。
で、私は変わった事をしたがるから、家族はケガをしないかとハラハラしているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!