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第六章 初めて見るもの
第三十二話 欲しかったコショウです
「ただいま、ママ、ママ―!」
「はいはい、おかえりなさい」
「ただいま、はー重い」
「ご苦労様」
外のものを中に入れるねとお兄たんとで、手押し車の中のものを出していきます。
「歩くたびに注文をもらって大変だったよ」
「それはよかったですね」
「それでこれ、二十三万だ」
「まあ、大金、どうしましょう」
「明日にでもドワーフのところに行ってくるよ」
「そうね、それがいいわ」
私はそれを聞いていました。
「お兄たんドワーフって?」
「あー、金かしさ、その代わり、大金も預かってくれる」
銀行みたいなもんかな?
「ただし、ただじゃないから困るんだよな」
「ただじゃないの?」
「そうだな、今日ギルガーのおっちゃんが言ってたギルドってあっただろ?」
そういえば、登録すればお金が入ってくる、日本じゃ商標登録のようなものだと思っていたけど違うのか?
うん、うんとうなずいた。
「あれはお金を出すと誰でも使える、使えるというより作ったものを売ることができる。黙って使うと捕まっちゃうんだ。お金は全部俺たちのところに入ってくるわけじゃないけど、少なくても入ってくるんだ」
あってるかも。
「それじゃあ、ギルドに登録するとき、パパじゃなくてドワーフにするの?」
「さすがだな、そういうことだ」
フーン、じゃあ下手に高いものは渡せないってことね。
でも金額の何割かがその人の手元に入るってことね、利子、利息ってところか、トランクルームみたいなもんか?そうか貸金庫だ。
かってもらった中で一番高額になったのはおばあちゃんの作ったキルトの布団です。これは金貨二枚になりました。
作るのも手間だし、私も母さんも手伝ったんだ、三人でしたから案外早くできたのだ。売るつもりはなかったんだけどね、布がほしいから、いくらになるか試しで出してみようということになったんだ。
そして、落ち着いて、私は頼んだものを広げました。
木の箱です、硬くて開きません。
父さんが来て開けてくれました、この箱すごいなと思ってみています。
「あ、紙」
「本当、湿気に弱いのかな?」
ふーん。
「では開けます、オープン」
紙を開けました、そこには黒い粒、みんなが香りをかぎます。
結構多いです、もっと少ないと思っていましたが、大きなジャムの瓶ぐらいあります、これなら一年もちそうです。
「んー、いいにおい」
「何とも変わった、でもいいにおいだ」
「これがコショウなの?」
「うん、これで臭いお肉とはさらばだわ」
一粒を出して、私の作った紙に挟み、父さんに叩いてもらったの。
「うわー、砕くともっと香りが濃いね」
「ママ食べて、ピリッと辛いけど、これがポテトなんかによく合うの」
パパもどうぞというと二人は初めての食品におずおずと手を伸ばしつまんだものを口に入れた。
二人とも、驚きの声を出し、飛び上がってダンスでもし始めちゃうんじゃないかと思うくらい。
お兄たんはちょっと不思議な顔。
とにかく、これでヤギのお肉がおいしくなる。
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