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第三話 ここはハイジ?の世界デス
神様?スキル?転生ステータス?そんなの何もなかったよな。
ただ今は前世?の記憶がある。
前世と言っても五十五歳の記憶。確か五十五歳、それも季節は夏。
なぜ?ああ最後の記憶、タンクトップ姿。太いたるんだ二の腕が見えていたのがわかります。
年寄りの部類だ、半世紀生きたんだもん。病気もいっぱいしたけど、死んだときの記憶だけは、あれだけなんだよなー。
病気なら、ある程度の記憶はあると思うのだが・・・、ほとんどない、ということは即死だったのかもなと考えてみる…それも無駄か。
案外、しっかり覚えてるもんだな。
あ、名前?
名前、名前と呪文のように繰り返してみても出てこない。
確かー・・・。
おい?お前?奥さん?叔母さん?おー?ブチョウ?これって名前かな?
名前はー…まあいっか。
今はチャーム、かわいいし、気に行ったし、もうみんなチャームって呼んでいるからこれでいい。
空を見上げた。
青い空。
「アブブーブーぶ―!」
叫んでみても言葉になんかなんないしな。
「なにってんだかわかんねーよ」
そういってのぞき込む兄アルべ、金髪、目のクリクリッとした、少女漫画から飛び出したような王子様。前の世界からしてみれば超イケメンだ、こんな兄で、うれしい。…ということは私も、ムフフ。
まるで後ろにある青い空と同じ青い目、んー今抱かれて、私は、昇天しそう。
そして、今から行く、父と母も漫画の世界の美男美女、ベルサイユのばら、アンドレ!と叫びたくなるような栗毛の長髪を結んでいる父と、マリーアントワネットと呼びたくなるような天パ、クルクルカール、金髪の女性。私はこんな人たちのところに生まれてきたのだ。
夢の世界ではなかろうか?早く鏡が見てみたい―。
「うわー、暴れるな、落とす―!」
ゴン!
「ふ、ふえー――ン!」
超痛いっす、頭から落ちました。
何やら騒いでいるのがいるようですが痛いのでお構いなしです。
【うわー、漏らしやがった】
【臭ーい、濡れたし―】
【いやーん】
そんなの知るかっ!でも冷たいよー。
「よしよし、どうした」
イケメンパパです、抱きしめられました。
ここ、ここがいたいのー。おしめ替えて―!
「よしよし、痛いの痛いの飛んでケー」
ン?ここは日本?
そんなんじゃなくて―、痛いのよー!冷たいのよー!
よしよしとあやす両親ですが、残念なことがあります。この二人、若さとは罪なのでしょうか?幼いからか、物を知りません。まあそれはこれから何とかなるとは思いますが。
それともう一つ許せないことが…!
抱っこされやっと世界が見えました。
何もない、緑です、私のこの視線から見えるのは、山です山しか見えません、こんなド田舎嫌だー!
だって、田舎が嫌で上京したのよ、いやー!
「ビヤー!」
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