第三十六話 行商人クーパーさんデス

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第三十六話 行商人クーパーさんデス

 さて、ここからは本当に引っ越しの準備が始まります。 十二月の中旬から二月の中旬までの三か月下の家で過ごします、どっちが別荘かな?なんて思ってしまいますが、冬限定なので、下の家を別荘と呼ぶのだ。 ただいまー! おかえり。 ばあちゃんとじいちゃんに抱き着きました。 「父さんここにつけてください」 「ここだな」 うん。 「あれでどうするんだい?」 「あれでもう、お茶とか干し芋とかヤギやカラスに食べられることがないよ」 「そうなのかい?」 カラスは頭がいいので、おばあちゃんがいなくなるとすぐいたずらするんだ。 なので、チーズ小屋の空いている天井を使います。お日様も入るし、風も通る一等地です。 よしいいぞ。 じゃあこの紐をかけてください。 試運転、試運転、くるくるレバーをまわします。 カチン,カチン。 「この音はなんだ?」 「見てて、手を離しても」 「お、落ちてこない」 「でしょ、クルクル」 カチンカチンと音がして、四角いものが空に昇っていきます。 「この紐は風であちこちにぶつからないように引っ張ってここで止めてください」 「干し台ができちまったな」 「へへへ、おいも、待ってます」 「冬ごもり用の干し芋いっぱい作りますかね、おじいさん」 おじいちゃんたちも山を下ります、でももう二人では大変なので、父さんや男の人たちが手伝います。父さんたちは爺ちゃんたちの家も今度掃除しに行くんです。 ある日の夕方、山を登ってくる人が見えました、こんな時間、登ってきたら降りるのは大変です。 母さんと、その人を見ていました。 「や―、マルーナ、セリアはいるか?」 「あ、はい、あなた―!あなた―!セリア―!」 声がこだまします。 こだまというかグルーナの声?だと思う。まあいいか。 おじさんにお茶を出します。 「ありがとうな、ン?うまいな」 「麦茶だよ」 「麦か、へー」 父さんが帰ってきた。 「これはクーパーさん遠いところすみません」 このおじさんが竹を売ってくれる人?ラッキーかも。 「それで急ぎとは?」 下の家、うちとじいちゃんのところの水を流すのがあちこち壊れているんだって、それを直してほしい。 直す? あー! 「びっくりしたー」 「どうした大きな声出して」 「おじさん、バンブー売って」 「バンブー?」 「竹!えーと、書くもの黒板、えーっとこんなの!」 紙がないので黒板があります、古いものですが十分です。父ちゃんが使っていたおさがりです。 そこに絵をかきました、わかるかな? 「バンブーンかこれをどうするんだ?」 これは間に節がある、それさえ穴をあけることができれば、ホースのような代わりになる。 「へー、あの節は抜けるのかい?」 「見たことないけど抜けると思う」 「は?見たことない?」 「うん、楡木さんに聞いたの」 「楡の木?」 「この子は」 「あー、あいつらの声が聞こえるのか、へー、セリアどうする?」 「いや、水は直してくれますか」 「よし来た」
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