第七章 渡り鳥

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第七章 渡り鳥

第四十一話 下準備はばっちりデス 荷物がだんだんまとめられていきます、食べ物は最後になるので、冬物だけをまとめるのですが。麻袋やただの麻布に巻き、紐で縛っていくだけです。 「いやー、持っていくの!」 「そんなのだめだ」 「これがないと困るんだもん」 蜜蝋や私の荷物もろもろです。 「そんなに持っていけないんだ!」 「持っていくのー!」 兄弟げんかです。 「こら、なにしてるの!」 「お母ちゃん、これ持っていく」 「ダメだ、荷物になる」 「いいもん、私が持っていくもん」 「手押し車だけじゃないんだぞ」 「わかってるもん!」 「わかってるって、そんなに、どうするの」 「絶対必要になるんだもん、持っていくんだもん」 「はー、お母さん知らないわよ」 「俺も知らねえからな」 「ムー、いいもん」 夕方の食事時です。 「どうするんだそんなにいらないだろう」 「いる、絶対いる!」 だって四か月もいるんです、暇をもてあそびたくはありません。 「自分でするんだな」 「うん、お願いします」 「まったく誰に似たんだか」 「あら私だって言うの?」 「言ってません」 「喧嘩はやめようね、ね。」 小さな声をかけました。ごめんなさいと言いながら。 そしてその夜、みんなが寝静まったころ外に出ました。 ザザーンと、もみの木が大きな音を立てます。 「北風だ、寒くなってきた、こんばんわ、もみの木爺さん」 【どうだ、準備はできたか?】 「うん、でも本当に大丈夫かな?」 【そりゃ大丈夫だ、毎朝あんなうまいもの食ってるんだ、あいつらも南に行く前にたんまり食えるなんて初めてだろうしな」 私はパンくずや、豆や麦茶のカスを鳥さんに上げていたの、動物も来たよ。 「それならいいんだけど」 【どうした】 「ン?私のわがままでけんかになった」 でも長い冬ごもり、雪が順調に溶ければいいが、大体が三月までいるから。 「・・・うん」 【心配するな、お前もこの声が聞こえなくなる時が来るんだ、それまでやりたいことをすればいい、セリアもマルーナもわかっているから怒鳴り込むことはないだろう?】 「うん、それには感謝してる」 【それでいい、お前は賢い、それでみんなが幸せならそれでいいじゃないか】 幸せ、そうだね。 「うん、ありがと」 【ほら、早く寝ろ、明日、アルべに頼むんじゃろ】 「うん、お休みなさい、楠さんお休み」 おやすみなさい。 次の日の朝。 外はまだ真っ暗です。 「お願いします、頼んじゃったのー、だからお願いします!」 「だから―、そんなの来るわけねえだろ」 「行くんだってば、鳥さんたちが運んでくれるんだってば、お願い」 「アルベそんなに大荷物なのか?」 「父ちゃん、これだけだ、でも屋根の上に広げろって」 そこにはたたまれた布を持っています。 「屋根?」 「石の屋根だから、鳥さんが下りても平気でしょ、荷物は私が山から下りたら自分で下すから、お願い」 「あの荷物を鳥が運ぶのか?」 「うん、運んでくれるって」 「できっこないよ、あんないっぱいの荷物、無理無理」 「お願い、お父ちゃん、お兄たんお願いします」 と二人に頭を下げました。 「アルべ・・・」 「わかったよ、知らねえからな」 「ありがと、やったー!」 父さんたちは暗いうちに山を下りて行きました。 「さてと準備しますか!」
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