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第四十四話 下山デス
そして一週間後やっとお兄たんたちが下から登ってきました。男の人たちが馬やロバを引いてきます。
「これをお願いします」
「なんだこれ?」
「手押し車のお馬さんようです」
「こんなの、脇に落ちたらどうするんだ」
「落ちないもん、見て、私の手を広げた分しかないから平気だもん」
「どこにつけるんだ?」
と言ってくれた叔父さんがいました。
やったー、ここにね、こうして、少し遊びがあるようにするの。
「遊び、あーよく知ってんな」
羊の皮で使えないところを使っているのでお馬さんにも優しいのです。
「へへへ、お馬さんどうですか!ポプラさんどうか聞いて!」
「大丈夫だって、お願いね」
「すみません、もし塩梅がよければ使ってください」
「ああ、そん時は頼むわ、そんじゃいくぞ」
「じいちゃん、ばあちゃん待っててねー」
「オウ、先に行っとるぞ」
荷馬車の小さいものです、これでも十分です、お年寄りたちはだいぶ気を使いますからこれだけでいいでしょう。
ぞろぞろと列になって降りて行きました。
明日はうちの番です、叔父さんたちは使い勝手がよければ明日もアレをつけて持ってきます、じいちゃんの家からは結構緩やかな昇りなので、馬や牛も来ることができますがその先は急な山道なので人の足でしか行けません。だから行商のおじさんたちは爺ちゃんのところまでしか来ないのです。
お父さんには褒められたけど、ちゃんと話してほしいと言われました。お兄たんもです。ごめんなさい。
じいちゃんの家は人が入ってこれないように扉や窓を打ち付けてしまいました。チーズ小屋も、ヤギの小屋も、きれいさっぱり何にもありません。
広いな。
「チャーム、外に出なさい」
ヤギ小屋だけはうちの荷物を運んであるので出入りできます。動物たちにいたずらされないように注意です。
少しずつ持ってきていたので、だいぶ楽ですが、往復は大変です。
うちのほうも、天窓以外は外から打ち付けてしまいました、煙突もふさいで、横の穴を開けています。
今日は、夕方にお母さんと作ったものを食べ、朝はそのまま出かけます。玄関は雪に覆われるのでそのままで平気です。
天窓の下にはしごを置きました。
「なんでここに置くの?」
雪が積もり、猟師達が来たときまどから家の中に入るからだそうです。
ふーん。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、これここに貼ってもいい?」
「ハハハ、じゃあ、温泉があります、どうだ、これも貼っておこう」
はって、はって!
お風呂、お風呂!家族みんなで入ります。
「ここは閉じなくてもいいな」
「うん、誰かが来て使ってもいいもんね」
「はー、いいお湯」
「お兄たん、じいちゃん見たい」
「うっせーよ」
「今まで湯あみしかできなかったのに、うれしいなー」
「じいちゃんたちも喜んでたよ」
「次の日体が軽いのよ、ねえ」
「あー、こんなのができるなんて夢みたいだな」
夢、夢じゃないモーン!バシャ―ン!
「チャーム!」
「こらー」
「ハハハ、それー!」
ザパーン!
石鹸も大成功で、かゆくありません。
当分温泉ともおさらばです。
いい家族です、とても幸せです。
山を下りてきました、馬できたおじさんたちはいいものをもらったと、今回は特別にじいちゃんたちのほうを安くしてくれました、よかったね。
そしてこの冬、私たち家族だけじゃなくじいちゃんたちも巻き込んで、大変なことが起き始めるのです。
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