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第六話 早く大きくなりたいデス
やっとハイハイできる年になりました、食っちゃ寝そんなことを繰り返している毎日なので間は割愛させていただきました。
タッチもできて行動範囲が広がります。着ているのは手首と足首を結んだだけの布です、動きにくいったらありゃしない。
記憶はできるだけ抜け落ちないように繰り返しておりますがなんせ一年が長い。おっぱい飲んで寝るだけなので、次、何かのアクションを覚えた時、この記憶が消える、そう思ったら、居ても立っても居られない、でも、この幼い体では・・・。
「いいか、あっちは坂だからな、この辺にいろよ」
「あーいー」
ハイハイすればまるでもだえるような声、が・・・?
【あっはーん】
【モットー】
雑草です、ただの草です、ヤギが食べる草です…。
声がきもい。
なんではいはいすると何とも言えない声を出すのでしょう?それも男で野太い声、手で撫でてみました。
【いや~ン】
撫でられたから?
叩いてみよう、バン!
【何すんねん!】
草が怒った?
もう一回。
バン!
【ドアホ、何すんねん手めーしばくぞ!】
おー、芝だけにシバクですか。
感心してその辺をバンバン叩きました。
【チャーム、てめー!】
【チャーム、やめ、やめろ!】
【【【アホンダラ、やめんか、ゆうてるやろ!】】】
大合唱です。
それにおののき、バックする。
きもち悪いオヤジ声の大合唱が這いずるたび聞こえるんです。
ドン、何かに突き当たった?
後ろを振り返る。
うわー。
大きな木!
【チャーム、ここにいるのよ、向こうは危ないわ】
きれいな声、その木に抱き着いた。
【あらあら】
【お、こいつは言葉がわかるみたいだな?】
誰?
隣から覗き込むようにしてみるのはこれもまた大きな木です。
「あぶぶわーわー」
【俺のことわかるのか、そうだ、俺はモミの木だ、こいつは楠、よろしくなチャーム】
うアーバババ―と抱き着いたのだった。
やはり幼児語は彼らにも聞こえません。
ただ植物の声は、大合唱で耳が痛いです。
あまり遠くは聞こえません。
そうですね、半径二メートルというところでしょうか、ただ今の私の大きさではそれぐらいに見えます、大きくなったら距離感も変わるのでしょう。
ですが、大自然です。みんな忙しいのか、ほっておかれます。
蝶や虫と遊ぶだけしかありません。
早く大きくなりたい今日この頃です。
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