第三十八話 跳ね上げ式の橋デス

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第三十八話 跳ね上げ式の橋デス

 ドンドン人が流れていますが、今はまだ、押さえておかなければなりません、それは王様が来た時、断罪してもらい、彼らが犯罪者だということを突き詰めるだけの材料を集めているのです。 「なんだか人通りが少ないですね」 「ここも葬式だ」 家族全員が消えたとなると、うちの村に襲い掛かっているのは目に見えています、だから家族の数人が死んだということで、家には必ず一人残るようにしたんです。それが赤の他人でも信頼できる方ならかまいません。 そうすることで、残っている人たちの目を欺くことができると思い今こうしているのです。 村人全部が隣村に来たいわけではないのですから。 夜遅く、川の橋のたもとに馬車が付きました。 「ごくろうさん」 「またあしたなー」 「それじゃあな!」 声を潜めて、手を振ります。 この橋は仕掛けがしてあるんです。向こうから来ても渡れない橋、跳ね橋を作りました。 人は大勢いるので、急ピッチで作ったんです、川幅は狭いですからね、案外早くできました。 最初は頓智のようなお話で、私に何かいい案はないかと聞いてきたので、じゃあ一歩でも向こう側に渡さないのを作ればいいと言ったのがきっかけでした。 橋を渡るだけで隣の村はお金を取られるのだそうです、だからこんなものを作りました。 文句を言われても、橋をかけなければいいのです。 たった数センチ、向こうの土地にかけることのない橋ですから、彼らはみんな歩いて橋を渡ります。 土地にかかっていないので、ただで渡れます。 向こうに人がいますが、たった一歩、陸地に触れていない分税金対象外ということで、皆さんまとまって、朝と夜、こうして迎えに来るんです。 ほとんどの家から、男たちが残り、ここからはまた乗り合いの馬車に乗ったり、もちろん歩いて帰る人もいれば、馬に乗って帰るひともいます、隣村にいって仕事をしているなんて言えないのですから。 もしも誰かがそんなことを言ったら、隣村に残してきた家族と会えないことを男たちはよく知っていたのでありました。 馬や馬車を置いていると税金をよこせというのが現れたので、一番近い家の人が場所を提供してくれることで、それもなくなったみたいです。 とにかく、小銭を稼ぐ輩が多いのも特徴みたいな村です。
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