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いずれ、人というものは死ぬものだ。
そして私は今、その死を迎えようとしている。
公園のベンチに座り込み、空を見上げるとそこにはキラキラと輝く星が見えた。いざ死ぬとなってもびっくりするほど冷静だ。きっと自分でも実感が湧いていないのだと思う。
もし、あなたが明日死ぬとしたらどうするだろう?
家族と一緒に過ごす人もいれば、好きなものを好きなだけ食べたいという人もいるだろう。人それぞれ違うことを考えると思う。
私はここで平凡に生きて、ただ日常に流されて死ぬことを望んだ。
そんな私を神様は惨めとでも思ったのだろうか? 最後に少しでもいい思いをさせてやろうと思ったのだろうか?
私はそんなこと一切望んでいなかった。
しかし、今となれば神様は私が臆病な人間だということを知っていたのかもしれない。
「こんなところで、何してるの?」
公園のベンチで座っていた私に話しかけてきたのは男の人だった。綺麗に染められた金髪が目に入る。少し強面な顔をしていて年の頃は20代半ばくらいだろうか。ギターケースを背負っている。
ただ私は今日が終わるのを今か今かと待っていただけで何をしているわけでもない。この問いにどう答えようか迷っていると彼は私を見て少しクスッと笑った。
「やっぱりこんな夜に声かけたら普通不審者だと思うよね」
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