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そう言いながら背負っているギターケースを下ろし、私の隣に腰掛けた。
「俺の名前は、谷 和哉」
和哉って呼んでいいよと私に向かってニコッと笑った。少し強面で怖い印象だったが、笑えば意外と可愛らしい人懐っこい顔をしていた。その笑顔を見ると少なくとも不審者には見えなかった。
「君の名前は?」
和哉と名乗る彼が私の名前を聞いてくる。
「……セイカ」
私は咄嗟に嘘をついた。会ったばかりの人に名前を言うのは抵抗があったのかもしれない。まぁどうせ私はもう死ぬのだから、本名でも偽名でも何だっていい。
彼は私の名前を聞いて少し驚いた顔をしていた。
「セイカ?」
そう言うとまるで信じられないというような顔をしていた。同じ名前の知り合いでもいるのだろうか? それにしても驚いているなと思いながら私は続けた。
「星に花と書いてセイカ」
なんでこうもスルスルと嘘が出てくるのだろうか。この時は自分でもびっくりするくらい自然と口が動いた。どうせ知らない人だ。本名を言ったって少しすれば私のことなんて忘れる。
「星花か……いい名前だね」
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