第一話

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 そう言うと彼は私を見てニッコリと微笑む。その様子を見るとこの人は純粋に私のことを星花だと思っている。何だか悪いことをしてしまったかもしれないと思う。しかし、後悔してももう遅い。 「俺、バンド組んでるんだけどそのバンドの名前がStar flowerって言うんだよね。ほら星花って英語にしたらStar flowerでしょ?」  そう言うと嬉しそうに笑う。だからさっき驚いた顔をしていたのだろう。  それから彼は、まだインディーズでしかCDを出せていないがメジャーデビューを目指していること。今は駅前で路上ライブをしていた帰りであることを教えてくれた。ギターケースを背負っていたのはその為だったのかとここで理解した。 「それで、こんな所で何してたの?」 「……星、見てました」  本当は星なんて見ていない。この時も不思議と口が勝手に動いてそう答えていた。 「確かに今日綺麗だもんね」  今日は空気が澄んでおり、雲が無く星が沢山見えた。だからこんな嘘も信じてもらえたのかもしれない。 「でもこんな時間まで流石に危ないよ」
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