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気がつけば、私が和哉の家に住み始めてから一週間が経っていた。
「じゃ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
私がそう言うと、和哉がにこりと笑って手を振る。つられて私も手を振った。和哉は路上ライブがない日は近くのカフェでバイトをしている。さすがにバンドだけで生活をするのは難しいらしい。今日はそのバイトの日。私は和哉を玄関で見送った。
「さてと……やりますか」
私は家事を全てするという約束でここに住ませてもらうことになった。今日も和哉がいない間に家事をする。私もバイトをして生活費を出すと言ったが、何故か和哉に断られた。生活が厳しいと言っていたのに見栄を張っているのか何なのか、よく分からない。
私は和哉がバイトの日は家事をして、路上ライブがある日は手伝いをした。そして、練習をするとなれば一緒に行って歌を聞いていた。
そんなある日、いつも通り路上ライブの手伝いをしている時だった。スーツを綺麗に着こなしたスラッとした女の人が話しかけてきた。
「お疲れ様! 差し入れでジュース持ってきたよ!」
「おう! お疲れ、静香!」
「あっ、静香じゃん! お疲れ!」
和哉と慎二さんはその女性と仲良さそうに話し始めた。
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