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喧嘩するほど仲がいいとはまるでこのことを言っているようだった。二人を見ていると何だか微笑ましかった。きっと二人とも人見知りしない性格で似た者同士なのだろう。挨拶をしてから顔を覗き込む姿が似ていて、つい笑ってしまった。
それからいつも通り準備を手伝い、それが終わると静香さんとライブが始まるまで話をした。静香さんの話を聞いていると自然と慎二さんと出会った時の話になった。元々二人の路上ライブを見たのが、慎二さんとの出会いだったらしい。
「たまたま仕事帰りにここで歌ってるのを見たの。それからちょくちょく顔見せるようになって仲良くなっていったって感じかな」
「へぇ、そうだったんですか」
「その時は全然人もいなくて、聞いてるのは私くらいだったんだよ」
でも歌っている二人はキラキラ輝いていてと気がつけば立ち止まって歌を聞いていたと静香さんが言う。
「こんなに今は人気なのに……」
「最初は全然だったのよ」
「何だか想像出来ないです」
「まぁ……ここまで来るには大変だったけどね」
お客さんがいない時から静香さんは慎二さんのことを支えていたのかと思うと凄いなと思った。私には真似出来そうにない。
「あっ! もうすぐライブ、始まりますよ!」
広場の時計は午後六時を指していた。和哉と慎二さんが出てきて準備をしている。
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