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出逢い
秋月七星アキツキナナセに俺が出会ったのは去年のクリスマスだった。
※※※※※※※
「ホワイトクリスマスか」
洒落てるな。
街はクリスマスモード一色。幸せそうな家族やカップル、あ、あれはきっとこの空気に対抗すべく集った友達どうしだろうか。
楽しそうな声が聞こえてくるからクリスマスに乗じて楽しみたいだけなんだろう。
俺こんな時に一人で何してんだろ。
「寒っ」
ホワイトクリスマスなんて聞こえはいいけど雪のせいでいつもより寒いじゃんか。
俺の安物の薄っぺらいコートじゃ寒さは凌げない。
やっぱあの時出し惜しみせずちゃんとしたもの買えばよかった。
少しでも温もりを求めてマフラーに顔をうずめる。
今日みたいな日には俺にとっては最悪な日だ。
寝るところないし。お腹も減ったし。
せめて飯ぐらい食わねぇと。仕方ないファミレスで朝まで凌ぐか。
目的地に向かおうとした俺の耳に何かが倒れる音が聞こえてくる。
どう考えてもヤバいよな。関わらない方がいいよな。でも無理だよな。
なんでわざわざ俺の前で倒れるかなぁー
「大丈夫ですか?」
「ゆ、き?」
「え?」
え?なに?なんで俺抱きしめられてるの?しかもこの人でかい。重い。潰れる
「若!なにしてるんですか!すいません。て、雪さん?」
え?また?若と呼ばれたのは俺を抱きしめてる人でやってきたこの人に引き剥がしてもらいはしたが、俺そんな雪って人に似てるのかな?
「俺、ちがいますよ?」
「男?」
いや、なにそれ?男だよ、そりゃあ女顔と言われたことも少なくないけど、背もそんなに高くないから女に間違われることもあるけど、男だからね
「あー、もまたこんなに呑んで、とにかく若帰りますよ」
「あのー、離してもらえませんか?」
若さんらしいその人の手は俺の腕を掴んで離さない。いや、人違いっていい加減気付けよ
「とにかく、あなたも来てください」
「え、ちょっ、」
拒否るすきも与えられずいかにも怪しい黒塗りの車にひきずりこまれてしまった。
やべぇ、俺今日死ぬのかな。
クリスマスになんでこんなことになってんだよ俺は。
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