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 10年の時が過ぎ、私は今でもどうやって逃げだしたのかと不思議に思う。  だけど、この白い壁に囲まれた部屋にいると、不思議に安心感が得られる。  その後、誠くんやケイコさんがどうなったのかを母に何度も訊ねた。でも、母はその話題になると、頑なに口を閉じた。  それどころか、おかしな事を言う。  「朱美、何度も言ってるでしょう。私にはケイコという友達はいないのよ。お薬、ちゃんと飲みましょうねえ」  13歳の夏から私はこの心療病棟にいる。
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