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 10分程、駅前で立ち尽くしていると、一台の古いバスのような車が大きい音を鳴らしながら姿を現した。  「遠い所から来なすって、疲れたんでねえの?ほんとうに、坊ちゃんだちを待たすて、わるかったねえ」  浅黒の肌に皺だらけの顔を運転席から出しながら、男は聞き取れないような、何処かの方言ともいえない言葉を口にする。  この人は誠くんと亜紀ちゃんのお爺ちゃんなのだろうか?  男はバスから降りると、荷物をバスの後方に積み始める。  「さあさあ、坊ちゃんだちは中さ入っで、ゆっぐりしてて下さいなあ」  坊ちゃんというのは何となく、ケイコさんの旦那さんに向けられている気がする。  この人は誠くん達のお爺ちゃんではなさそう。  私達がバスに乗ると、中は思っていたより涼しく快適だった。  「パパ、あの人誰?」  亜紀ちゃんが宗一さんに訊ねた。  「あの人は長年お爺ちゃんに仕えている、じいやだよ」  宗一さんの言葉に私や誠くん、ケイコさんは驚いた。亜紀ちゃんは言葉の意味がわからなかったのか、そっかあ、と聞き流している。  「なあ、じいやって召使いだよな?」  誠くんが私の耳元できく。  私は黙ったままコクリと頷いた。  私達を乗せたバスは新緑溢れる山道を通り抜け、田畑に囲まれた畔道を走っている。  駅から古いバスで揺られ、40分程で古いお屋敷が見えてきた。
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