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「母さんに君の友達のお子さんを連れて来ると話しててね」
宗一さんは平然と言い。私の違和感も気のせいかと思ったが、その夜、亜紀ちゃんと同じ部屋で寝ながら改めて考えると、やはりおかしいと感じた。
初めて孫を見たというのに、あのご婦人は誠くんや亜紀ちゃんには全く興味を示さなかった。
ただ、夕飯時、二人の祖母らしい一面も見せていた。
「さあさあ、沢山お食べ」
二人には夕飯後のケーキも用意されていた。私には何故か枇杷を出された。
冷えた、甘い枇杷は美味しかったが私もケーキが良かったと心の中で思った。
でも、やはり孫だけ特別なのだろう。
10畳程の広い部屋で私と亜紀ちゃんの布団二組が敷かれた部屋で寝ていると、時折、鳥肌が立つ程の肌寒さを感じた。
隣で寝ているはずの亜紀ちゃんの寝息も聞こえない静けさの中で、起きているのに、私は目を開けるのが怖かった。
何かがいるような気配を感じる。それは幼い亜紀ちゃんの気ではなく、もっと別の誰か、或いはもっと別の何か。
そう、何か得体の知れないものに恐怖を感じながらも私はいつの間にか眠りについていた。
眠りの中、風が顔に当たるのを感じた。いや、風というよりも誰かの息に感じる。
誰かが私の顔に顔を近づけ、覗き込んでいる。怖かった。
自分が起きているのか、はたまた夢の中にいるのかわからず、目が開けられない。
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