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 瑠美というのは私の母の名前だ。ケイコさんは母に何か心配事を伝えていたのか?  私は柱の陰に隠れながら、二人の様子を伺っている。  「ケイコ、何を心配しているんだ?僕が朱美ちゃんに何かすると思うのか?」  宗一さんは昨日までと違う不気味な笑顔をケイコさんに向けている。  ケイコさんは震えているように感じた。  私は嫌な予感がしつつも、子供であるが故に何も出来ないことを悟りながら、黙って隠れんぼを続けた。  ぼんやりとした恐怖が現実になったのは、阿比留郡中家町で三日目の朝を迎えた日。  村で祭りがあるからと、お屋敷にいる10人ばかりの使用人が忙しなく働いている。  私はここへ来てから、毎夜、毎夜誰かの吐息を感じ、真面に眠れなかった。  昨晩、亜紀ちゃんに変わったことは無いかと訊ねたが、亜紀ちゃんはぐっすり眠れているようだ。  「朱美、見てみろ。面白い物を見つけた」  そう言いながら誠くんは紐で綴られた古い冊子を持って来た。  表紙には"鬼神様婚礼の儀"と書かれている。  「おに、かみさま?何だろうなあこれ。さっきさあ、あの婆さんの部屋で見つけたんだ」  誠くんは祖母のことが気いらないらしく、あの婆さんと呼ぶ。初日、あの婆さん不気味だぜと言っていた。  「なあ、これ今日のことじゃないか?そこには8月17日って書いてあるぞ」
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