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「そうか、その人彼氏居ないのか。なら大丈夫じゃない?澤谷、女子から結構人気あるし」
振り返りもせずにふっと彼が笑う声だけ聞こえる。
「でもその子がどう思ってるかだろ?武田ならどう?俺となら付き合っても良いとか思う?」
「え?分かんないや。実際告白されないとそんなの考えないじゃん」
「そっか。じゃあ……」
んんっと彼が咳払いして足を止めると、浮き輪が流れて彼を追い越した。
「じゃあ、武田。好きだ。俺と付き合う事真剣に考えて」
いつもと違う真面目な顔。
まっすぐな視線が冗談ではないと錯覚させる。
一瞬の間。
二人の間を水が楽しげに流れていく。
「走らないでくださーい!」
監視員さんの声にハッと我に返って、思わず苦く笑った。
「うぅん、やっぱり考えられないや。演技だって分かってるから、無理」
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