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その時々の泣く理由は一つだけだと思っていた。
悲しかったから。
嬉しかったから。
悔しかったから。
等々。
でも、人生の節目で違う泣き方を知った。
「もういやだーー! いたいーー!」
もはや何処が痛いかなんて分からない。死ぬんじゃないかってくらい痛い。痛くて辛くて、泣いた。
「暴れないで! ほら、頑張って! もう少しですから! 呼吸!」
子供みたいに泣きながら騒ぐ私を宥める声は、聞こえるけど聞こえない。
「いたいーー!」
「痛いのは分かってます! あなたが頑張らないと!」
ハッとした。そう、今私が頑張らないと。
痛みを堪えて泣きながら、息を吐いて、ゆっくり吸ってを繰り返す。
「もう少し!」
「ーーっ」
音にならない声と共に解放されたのは新しい世界。
産声を聞いた時、数分前と違う涙が出ていた。
「元気な女の子ですよ」
クシャクシャの赤ちゃんを見た瞬間、また違う涙が溢れた。
痛いからの安堵、そして溢れた感情。
泣いた理由なんて、言葉に出来ない。
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