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高校二年の夏に海の家でバイトを始めた赤井ケンジは出勤のためのバイクを駐車場の隅っこに置かせてもらっていた。夢の舞台はまちがいなくそこだ。 見下ろした海の眺めも、陽が暮れた時間にいたことはないが同じ場所である。 肝心の相手の女性だけが真実ではないのだ。おそらく非モテ人生をこじらせた不満が見せたノイズに過ぎないだろう。 ケンジが自分の見た夢の内容を話すと、白衣の男は天井をじっと見つめながら話を続けた。 「ふむ、  夕焼けが見えたということは晴れていたんですね。  場所についてもハッキリしている」 男はケンジの方に向き直り、証拠の分析を始めた。 「バイトは毎日ですか?」 「スマホに何か記録はありませんか? 相手の住所とか、写真とか」 「あ、」 ケンジはポケットからスマホを取り出した。 「なんか、気が付いたらキズだらけになってたんですよ。  覚えてないんだけど、どっかで落としたのか。  写真とか住所は・・・」 もしかしたら今見た夢が現実になるかもしれない。 ケンジは胸の高鳴りを抑えながら、写真や住所録、SNSのつながりなどをかたっぱしから探した。 「・・・ないです」
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