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あの時もほぼ同じ景色だった。その日僕は若葉色の土手に腰を下ろし、透き通った川をぼんやりと眺めていた。ただし蒸し暑さは全く違う。時代の違いか、田舎ゆえか、とにかくその時は今のように倒れそうな酷暑ではなかった。
当時の僕は情けなかった。人見知りでモジモジしており、友達も少なかった。それを見兼ねた父が、男らしくなって来いと、その夏僕を田舎のおじさんのもとで修行させることを画策した。僕はかなり抵抗して泣き喚いたが、頑固な父はそんな私を見てますます送り込む意思を固くしたようだ。
おじさんは父と違い穏やかで優しい人だったが、父に言付かっているのか、昼間は必ず外へ遊びに追いやった。開放的な地で野生児のような子供たちと交流させる。これが父の思惑であったらしい。
私にとって最悪の夏休みが始まろうとしていた。
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