あの夏

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 晩御飯の時に、今日はどうだったかとおじさんが尋ねてきた。 「たけしは元気でいいやつだろ」  僕はうんと頷いた。おじさんが言うにはたけしは幼いころから剣道を叩き込まれ、ここいらで敵なしだという。それでいて武道の精神も養っているため、心優しい、できた子供として知られているらしい。  まだ10年しか生きてない人生でも、僕は処世術を身に着けていた。波風立てないために、余計なことは言わなくていい。無頓着なおじさんでも、わざわざ間違いを指摘してやるまでもない。しかし次の一言を聞いてさすがにお節介に感じずにはいられなかった。 「そうかそうか、やっぱりたけちゃんとこにお願いしといてよかったな。ふうま、いい友達ができてよかったな」  僕は赤くなった手を隠すように気を遣いながらご飯を食べなければならなかった。
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