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「たっ、助けて!」
土手の淵に立ってみると、たけしは勢いよく川の中へ転がり落ち、そしてどうやら溺れているらしい。
「たけしくんは泳げないんだ!」
すぐさまつとむが叫んだが、それは最悪の状況を意味していた。しかし僕は考えるより先に土手を走り降りていた。
「ふうまくん!?」
「泳げるの!?」
水泳は習わされていたため唯一できるスポーツだった。服を脱いですぐさま川に飛び込んだ。
しかし子供であることには変わりがない。しかも自分より体格の大きい子を連れて泳ぐなど無理である。たけしのもとにはすぐにたどり着いたが、彼が溺れないように支えるだけで精いっぱいだった。
「大人を呼んでくる」
と、つとむが今更ながらにおーいおーいと叫びながら走り去って行った。
それからしばらく持ちこたえていたが、もがくたけしに僕も何度も浮き沈みを繰り返し、僕の力はそろそろ限界に達しようとしていた。
たけしを支えたまま、ついに顔が水中へ没した。あとは死を待つだけかと諦めた時、不意に体が軽くなった。水面に、いや、宙に浮かんでいる心地がするほどだ。ああ、やっぱり死ぬのかと薄れゆく意識の中でかろうじて目を開けると、けんたが僕の手を掴んでいた。
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