あの夏

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 若草色に染まる小さな土手に腰を下ろし、私は群青色の川を眺めていた。都会の喧騒に飽き飽きしていた今日この頃、私はわざわざ遠出して川まで足を運んだのだ。  セミの鳴く声に交じり、時折そよ風に吹かれて木々が微かに葉音を立てる。その音色に心落ち着かせながら、私は流れていく白い雲を見上げた。  かつて一度だけ経験した、田舎暮らしのあの夏に思いを巡らす。
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