31人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「あれ、ジョニー。何やってんの、そんなへっぴり腰で」
誰にもばれていないだろうと、高を括った矢先、ミル先輩にあっさり話しかけられた。
覗き行為よりも(厳密には、覗き行為の覗き)、不自然な俺の姿勢を指摘してくる辺り、やはり変わった先輩だ。
「……ああ、何だ。全く、副部長は見境ないなぁ」
俺の視線の先を辿り、ターゲットの捕獲準備にかかったようだ。
「部活の合宿だからって、調子乗ってんなぁ。全く。これじゃ1年生に示しが付かないじゃん」
俺のデバガメには一切触れず、スカイグリーンのTシャツを着たカップルに矛先が向かっている。
2年生の副部長とその彼女、今回の舞台だとヒロイン役のゆゆ先輩だ。
「ミル、何してんの。その体勢、新しいヨガのポーズ?」
熱帯夜に吹きぬける風のように、今度は部長が声をかけてきた。
隣を見れば、体幹はまっすぐなまま膝立ちで、首と左手を床と水平に伸ばしたミル先輩の格好は、ヨガのポーズにも取れなくない。
「ヨガポーズからの、コンテンポラリーダンス!」
「お、閃いたね。それ、一幕の暗転前に取り入れる?」
どこまでも脳みそが柔軟な人達だ。
見れば、同じスカイグリーンのTシャツ姿で即興劇が縁側で始まっている。
そして、演劇部の先輩である彼等が、俺は結構好きだったりする。
最初のコメントを投稿しよう!