1日目

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「あれ、ジョニー。何やってんの、そんなへっぴり腰で」  誰にもばれていないだろうと、高を括った矢先、にあっさり話しかけられた。  覗き行為よりも(厳密には、覗き行為の覗き)、不自然な俺の姿勢を指摘してくる辺り、やはり変わった先輩だ。 「……ああ、何だ。全く、副部長(あいつら)は見境ないなぁ」  俺の視線の先を辿り、ターゲットの捕獲準備にかかったようだ。 「部活の合宿だからって、調子乗ってんなぁ。全く。これじゃ1年生に(しめ)しが付かないじゃん」  俺のデバガメには一切触れず、スカイグリーンのTシャツを着たカップルに矛先が向かっている。  2年生の副部長とその彼女、今回の舞台だとヒロイン役のだ。 「ミル、何してんの。その体勢、新しいヨガのポーズ?」  熱帯夜に吹きぬける風のように、今度は部長が声をかけてきた。  隣を見れば、体幹はまっすぐなまま膝立ちで、首と左手を床と水平に伸ばしたミル先輩の格好は、ヨガのポーズにも取れなくない。 「ヨガポーズからの、コンテンポラリーダンス!」 「お、(ひらめ)いたね。それ、一幕の暗転前に取り入れる?」  どこまでも脳みそが柔軟な人達だ。  見れば、同じスカイグリーンのTシャツ姿で即興劇(エチュード)が縁側で始まっている。  そして、演劇部の先輩である彼等が、俺は結構好きだったりする。
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