6人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「……あの子はこれを食んだのだと思います。」
「それと……私はあの子に毒なんて盛っていない。楼主の言いつけはちゃんと守ってます。」
私は香菜を見た。嘘はついていない。
……ということは誰があの子に毒を盛ったのか。
私は香菜が置いた葉を手に取りじっくりと観察する。
「水仙の葉だね、どうしたんだい?これ?」
「厨房で見つけました」
香菜は、愛用している大きな籠を持ってきて、そこから同じような葉を幾つも取り出し卓に置いていく。
「……厨房ってことは、尼拉と間違えたのかね」
私がそう呟くと香菜は、そうだね、とだけ言う。
「しかし、まだ昼前だ。何故これを食むのだ?」
私は疑問の言葉を敢えて口にする。
本当はどういう意図なのか大体は分かるが、それを口にすることは香菜の成長に繋がらない。
論理的に考え、答えを導くことは、薬師が患者の病を見極め、それに見合った薬を出す洞察力と判断力に繋がる。
早速私の質問の意図が分かったようで、香菜は顎に手を当て、口を開く。
「尼拉だと思ってることは合ってると思います。恐らく、尼拉は毒のある葉と間違えられることがあるという話は聞いたことがあったのでしょう。」
「あの子は私が薬学を学んでいることを知っている。……尼拉を毒葉に思わせ態と食み、倒れ、私に罪を擦りつけようとしたのだと思います。」
「…………それが今回、偽の毒葉で無く、本物だったと?」
「はい、恐らく」
やはり香菜は香菜だった。禿に貶められそうになったというのに、怒りもせず、心を落ち着かせ、冷静に状況と心理を推理することが出来た。
「及第点だよ」
私はそう言って香菜の頭を撫でた。
「………」
香菜は無言でそっぽを向く。その耳は僅かに紅く染まっていた。
私は苦笑すると、香菜に一つ助言した。
「もし、この先、私に関係することがあっても他人でいなさい」
この言葉の意味が分かる日がいつかきっとくるだろう。
いつか、きっと…………
最初のコメントを投稿しよう!