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ー鈴蘭の妓女ー
夢想楼の最上階から、美しい二胡の音が聴こえる。
同時に、シャランシャランと二胡の音に合わせるように鈴の音が響く。
それらと共に舞うのは一人の妓女。
鈴蘭の花の名を与えられた妓女、鈴蘭である。
齢十七と、上級妓女の中でも最年少である彼女は、その名の通り鈴蘭の花の様に可憐で、幼さの残る、されどどこか強かさが感じられる容貌をしている。
外でその音を聞いた他所の妓楼の男衆の一人がほうっと感嘆の溜息を零す。
そんなこととは露知らず鈴蘭は、妓女にしては露出の少ない、白を基調とした衣をふわりと靡かせ舞を踊る。
───鈴蘭の花言葉は純潔。
鈴蘭は今も尚その純潔を貫き通し、舞を踊り続ける
それは何故か──────。
鈴蘭は妓女でありながら、これまで一度も身を売ったことがない。
いわゆる未通女だ。
妓女には普通、水揚げと言うものがあり、手練の男に通じてもらうのだが、鈴蘭の花言葉の通り、純潔を売りにする為、鈴蘭は運良く水揚げを逃れることが出来た。
誰がその花を手折るのか、我先にとその花を望み手を伸ばす者は多くおり、その者らによって日々、鈴蘭の値は釣り上げられている。
彼女の純潔が破られる時、彼女の妓女としての人生は終わる。
そしてまた籠の外での新しい人生が始まる。
「鈴蘭。新しいお茶作ってみたんだけど試飲しない?」
そう言って部屋の奥から緑の簡素な衣を纏い、右手にすりごきを持った女がひょっこりと現れた。
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