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ー香菜の妓女ー
「香菜小姐」
鈴蘭は舞を辞め、部屋の奥へと歩みを進める。
香菜は鈴蘭と同様、五人の美妓の一人、薬学に精通している。
禿時代、香菜の名を与えられた当初は、同じ禿仲間に小馬鹿にされ、からかわれた。
しかし、香菜には、女衒に売られ、夢想楼の現楼主に買われる前から薬学の知識があった。
齢七つという幼い頃から字の読み書きができ、教養があった。
それを見込んで楼主は、香菜に薬学を学ばせ、才能を伸ばしていき、いつでも的確な薬や薬膳料理を与えてくれる香菜はいつしか人気の妓女となり、今では五人の美妓の一人として呼ばれる様になった。
────香菜は湯呑に茶を注ぐ。
こぽこぽと音をたてて注がれた茶は、薄緑に染まっていた。
「……いただきます」
茶を一口飲んでみると、爽やかな匂いが鼻腔を擽る。
「いい匂いだね」
鈴蘭がそう言うと、香菜は目を輝かせ、意気揚々と茶の説明を始めた。
「これはね、凉茶って言って、香菜を使ってるの!」
「香菜も茶になるのね」
「そうよ、これにはね、利尿作用、消化促進作用、通経作用、駆風作用、血行促進作用……と、あとあと…………」
「ちょ、ちょっと小姐!私、そんな知識ないから言われても分かんないって!」
鈴蘭は苦笑いで香菜に言うと、香菜は何故かにんまりと笑みを浮かべこう言った。
「なら私たちにとって重要な効能を教えてあげる!」
そう言って香菜は、また説明を始めた。
「香菜はね、堕胎薬としても使えてね、逆に殿方には強壮剤として使え……」
「あら、それなら幾つかそれで薬を作ってくれない?」
香菜が嬉々として説明している時、部屋の扉がすっと開き、豊満な体の妓女が二人の会話に入ってきた。
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