君だけの甲子園

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  「高野連(日本高等学校野球連盟)が正式に発表したから、本当だ。今年は、恐ろしい流行り病のせいで、重症化や死亡者も増えている。国が緊急事態宣言も出したほどだ。事態は本当に深刻だ。インターハイも相次いで中止される中、高校野球だけが特別でない。周囲の反対を押し切って無理に開催し、お前たち球児だけでなく、応援に来てくれる生徒や保護者、皆を危険にさらすわけにはいけない。誠に無念だが・・・・夏は、無い」  悔しそうに唇を噛み締め、監督が呻くように呟いた。  僕は、頭が真っ白だ。  悲しいとかそういう事よりも、どうしよう、アイツになんて言おう、という言葉の方が頭を駆け巡っていた。  僕はキャプテンでありながら、部員たちみんなに言葉をかけそびれた。きっと僕もみんなと同じように、ショックを受けているのだと思われているだろう。でも、そのショックの種類が微妙に違う。  玲児――  
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