君だけの甲子園

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 僕の通う高校野球部は、毎年一回戦敗退が決まっているも同然の弱小高だ。そんな部を引っ張ろうと、才能あふれる僕の親友は練習を頑張りすぎた為、昨年夏の試合が始まる直前に肘を壊し、夢を潰(つい)えさせてしまったのだ。  それから、平凡なピッチャー予備軍だった僕が、玲児の代わりにピッチャーを目指す事になった。  玲児は痛々しいギプスを嵌めた腕で、僕にピッチングを教えてくれた。  玲児を欠いた昨年夏の試合は一回戦敗退だったから、今年は一回戦だけでも突破したい。玲児が僕に教えてくれた事を、何とか形にしたいと昨年から頑張ってきた。毎日毎日、血反吐を吐くような思いで練習に明け暮れ、平凡な僕もそれなりのピッチャーに昇格した。全て、玲児のお陰だった。  今年は僕も三年生。流行り病のせいで二か月あまりも休校していた。それがようやく解除されて学校が再開し、最後の夏に挑むべく、練習に励んでいたのだ。  というより、この弱小高は少子化の影響で、隣の学校と合併する事が決まっている。部員は誰が欠けても機能しなくなる、たった九人しかいない。しかも、全員が三年生だ。夏に向けて猛練習してきた。弱小なりに頑張ってきた。  それなのに。  
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