2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんごめん」
そう言いなから、ぞろぞろと人が入ってきた。その中に田中さんの姿もあった。
「下で出待ちしてたら、もうこんな時間で」
「ええ、いいんですよ」
平野さんはそんな人たちに心無い言葉を返す。
「でも、こんなのもらえて」
田中さんが差し出した手の中には、色紙が挟まっていた。
李さんのサイン。李馬天。それはとても美しい達筆な字で書かれていた。
左上には田中さんの名前。
「本当に、偶然だったわー、たまたま外に出てくるときで。ああ、待ってたのは別の人なんだけどね」
「そうなんですよ!工藤翔平くんがいたんですよ!ああ、噂以上のかっこよさ!」
私はそれにひどく怒りを覚えた。
今度は坊主頭の集団が、山の上に上っていた。少し小高い山の上。あそこから飛び降りるのだろうか。
李さんの姿が目に入る。まるで映画のワンシーンみたい。
会議が終わって、バスで帰った。
結局自転車は見つからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!