研修センター

5/6
前へ
/6ページ
次へ
「ごめんごめん」  そう言いなから、ぞろぞろと人が入ってきた。その中に田中さんの姿もあった。 「下で出待ちしてたら、もうこんな時間で」 「ええ、いいんですよ」  平野さんはそんな人たちに心無い言葉を返す。 「でも、こんなのもらえて」  田中さんが差し出した手の中には、色紙が挟まっていた。  李さんのサイン。李馬天。それはとても美しい達筆な字で書かれていた。  左上には田中さんの名前。 「本当に、偶然だったわー、たまたま外に出てくるときで。ああ、待ってたのは別の人なんだけどね」 「そうなんですよ!工藤翔平くんがいたんですよ!ああ、噂以上のかっこよさ!」  私はそれにひどく怒りを覚えた。  今度は坊主頭の集団が、山の上に上っていた。少し小高い山の上。あそこから飛び降りるのだろうか。  李さんの姿が目に入る。まるで映画のワンシーンみたい。  会議が終わって、バスで帰った。  結局自転車は見つからなかった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加