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今日は自転車で行くことにした。
サドルがなくなって座るところのない自転車。買ったのはもう何年前になるだろう。サドル以外もボロボロで、けれど不思議な愛着があった。
パトカーが横を通るたびにドキりとした。あの人たちはすぐに私を悪者にしてくる。
今日も暑い。
センターの前には人だかりができていた。
そのなかには今日一緒に参加する田中さんの姿もあった。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
田中さんは人にまぎれたまま、そこを動こうとはしなかった。
入ってすぐの部屋では、免許の講習だろうか。この前みたばかりの、同じ図がホワイトボードにでかでかと書かれていた。
隣の部屋は、坊主の集まり。換気がどうのこうのというので、各部屋の扉は開けっ放しにされていた。
坊主頭の集団。講師は熱を込めて話している。他はみんなけだるそう。
あの左端の人。
私はその人に目が留まった。
俳優の李馬天さん。
後ろ姿しか見えなかったけど。
それでも私にはわかった。
小さなときに見た特撮映画。彼はその主人公。敵と戦う力強さに。私は心奪われ、それからずっと彼のことを見ていた。
きゅっと胸がしめつけられる思いがした。
それでも私はそこを離れ、自分の部屋へと向かった。遅刻してしまう。
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