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9.
「そんなもん、何の役に立つんです?」
ポールは途方に暮れていた。
「浮気に役立つじゃないか」私はにやりと笑った。「いや、冗談だ。真面目な話、例えば戦闘機に使ってみろ、どんなレーダーでも位置か速度のどちらかがわからない。ステルスなんか目じゃない、完全なニンジャ戦闘機になるだろ」
「そうか……」やっとポールの目に理解の光が差した。「じゃ、来週の木曜にはどんな尾行をすればいいんですかね?」
私は肩をすくめた。
「どうしようもないさ」
「え?」
「相手は不確定性原理だぞ。もうどうしようもない。確かなことなんて、もはや何もないんだ」
その時、新聞を持って来たまま、傍で話を聞いていたデラが言った。
「ひとつ確かなことがあるわ、ペリー」
「何?」
デラはため息をついた。「ミズ・クローリィーがウチ宛てに小切手を切ることは絶対にないってこと」
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