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7.
それから起こったことは、バート・ペンズラーの身に起こったことと同じである。
ポールはとあるマンションを突き止めはした。しかしそれがどこかはわからない。
博士は二時間ほどそこで過ごし、後はまっすぐ帰宅した。記憶を頼りに戻ってみたが、やはりマンションは見つからなかった。
「今日、もう一度探してみようと思うんですが」
ポールは消え入りそうな声で言った。
私は腕を組んだ。
「定点尾行中は、いつの間にか分岐点を通過されてしまったんだな?」
ポールは力なく頷く。
「直接尾行に切り替えると、アプリが動かなくなって現在地がわからなくなった……そう言えば、その後アプリはどうなったんだ?」
「それが、まったくデジタルってやつは」ポールは首を振った。「博士の家に着いた頃、突然復活したんです。まるで不具合なんか全然なかったみたいに。いま、アプリをつくったエリックにチェックさせてますけど、やっぱり問題はないって抜かしやがって」
「そうか……」
私の中で何かが囁いている。定点尾行ではいつ通過したかがわからない、直接尾行ではどこにいるかがわからない……何かで最近、そんなジレンマみたいな話を読んだ気がする……そうだ、それこそジョン・クローリィー博士の発明のニュースだ!
私はインターフォンを押し、デラにその記事を探させた。わが有能な美人秘書は、すぐに新聞を持って来た。
「これだ、ハイゼンベルグの不確定性原理だ!」
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