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「調べてみたけど、特に何か盗まれた形跡もなかったんだよね」
昨夜の出来事をおばあちゃんに報告する。
「それは座敷わらしの仕業かもしれんなぁ」と、おばあちゃん。
「えぇ?! やっぱりオバケが出るんだ?」
「座敷わらしはオバケじゃないよ。妖怪。よ、う、か、い」
私にとってはどっちも同じ。オバケだろうが妖怪だろうが、怖いものは怖い。あんな思いは二度としたくないなぁ――私の切実な願いも虚しく、座敷わらしはその夜も次の夜も私を悩ませた。
イタズラするわけでもなく、何かを盗むわけでもない。薄気味悪い気配を漂わせるばかり。ただ、次の朝目覚めると、どこか心にポッカリと穴があいたような感覚だけが残った。
おばあちゃんの体調も良くなり、次の日には田舎をあとにするという最後の夜。私はいつも通り、掛け布団にすっぽり。ただ、その夜だけは、どこか様子が違った。
膨らんだものから空気を抜いて萎ませるような音。何かを根っこから引きちぎるような音。その音が鳴り止むと、私の胸から何かが解かれ、スルスルと離れていく気がした。
異変を感じ取った私は、反射的に掛け布団からチラッと顔を覗かせてみた。
「あっ!」
目の前には絣の着物を着た少年……いや、座敷わらしの姿が!
腹の底から絶叫して追い払おうとした。すると、それを遮るように座敷わらしは言った。
「ゴメンなぁ。もらっていくよ」
彼の落ち着いた声とその言葉を聞くと、なぜか恐怖心がスッと消えた。
瞬きを繰り返し、目を凝らしてみると、彼の姿は残像だけを残し消えてしまった。ねっとりとした汗が全身にへばりつく。
「もらっていく……?」
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