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あの日から、心に余裕を持つことを心がけ、できるだけ時間を作るよう努力した。そして、あいた時間を見つけては、小説を書き進めてみることにした。
昔の女流作家に憧れる私は、パソコンを使うことなく、手書きで原稿用紙に物語を綴る。非効率なのかもしれないが、その行為そのものが私に小説家を感じさせ、夢に浸ることができた。
彼のおかげで夢を取り戻した。いや、そもそも彼のせいで夢を失ったんだっけ? 違う――きっと自分で自分の夢にフタをしてしまってたんだ。
「ありがとう。また夢を追いかけてみるよ」
ポツリと彼にお礼を言ってみた。
もう現れることはないと宣言した彼。いつかまた会いたいなと願う私。
でも、彼はきっとすぐ近くにいる。そして、私の夢を見守ってくれている気がする。
だって、執筆に疲れてそのまま眠ってしまった朝。ふと原稿用紙に目をやると、書きかけの文章が数文字だけ消しゴムで消されていたり、原稿用紙の隅に、ちょっとしたラクガキが書き込まれたりしていた。
それを見る度に私は彼に愛おしさを感じる。そして何よりこう思う。彼はやっぱりイタズラが大好きな――座敷わらしなんだなぁと。
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