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その正体はいったい?
あれは中学生の頃のある夏の記憶。猛暑が続き、おばあちゃんが体調不良で寝込んじゃったから、私が田舎に帰って看病してあげることになった。まさかそこで大切なものを奪われるなんて、思ってもみなかった。
「おばあちゃんのことは大好きなんだけど、おばあちゃん家、オンボロで怖いんだよなぁ。だって、オバケが出そうなんだもん」
ダダをこねる私。グダグダ言ってないで行ってきなさいと母親。気づけばローカル線の電車に揺られ、おばあちゃん家の前。インターフォンを鳴らす。
「おばあちゃん、来たよ!」
迎え入れてくれたおばあちゃんは、数年前に会ったときからそれほど変わってはいなかったけど、体調はたしかに良くなさそうだ。
「おじゃましまーす」
古民家特有の匂いが鼻を突く。上がり框に乗せた足が、小気味よく軋んだ。
おばあちゃん家は、トイレもお風呂も離れにある。だから、夜はいたずらに怖い。でも、一番怖いのが寝るときだ。「明らかにコレ、オバケでるでしょ……」と言わんばかり。天井のシミも障子の穴も床の間の掛け軸も、絶対に私を狙ってる! こんなの落ち着いて眠れるわけがない……。
と思っていた矢先。「ほら……」、畳の上をこする足の音。――これ、絶対に誰かいるって――部屋の中を怪しい空気が支配する。
あまりの恐怖に、掛け布団ですっぽりと顔を覆った。どうやら侵入者は、机の上のものや私のカバンの中をゴソゴソと物色している様子。布団の隙間から微かに伝わる音に震えていると、やがてその音はやみ、不気味な気配もなくなっていた。
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