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それでも容赦なく放課後はやってくる。
ハルは美波さんを屋上へと誘った。
美波さんは私を振り返り、軽く手を振り笑顔で教室を出ていく。
一緒に行くハルの手には大きなパネル。A2サイズ位ありそうだ。カバーはされていて中身は見えないけど。
まぁ、とりあえず頑張れハル。こればっかりは私が応援する訳には行かない、個人の問題だ。
私はハルも美波さんも大好きだけど、それとこれとは別問題。
ただ、どちらも傷つかないで済むなら、その方が嬉しいのは当たり前だ。
けどそれからわずか30分後、ハルが血相を変えて教室に飛び込んで来た。
「ハル?」
「洸、来てっ!!」
私?
「どうしたのよ?」
「良いから来て!!」
有無を言わせず屋上に引っ張って行かれる。
人気の無い屋上の一角に、立て掛けられたイラストのパネル。その前で顔を伏せてしゃがみ込んでいる美波さん。
「美波さんどうしたの!?」
「洸…」
顔を上げてくれた。もう涙で顔がぐしょぐしょ。
とても悲しそうだ、私はハルに近づくなと手でシッシッ!とする。ハルが遠巻きになった。
「ハルが…私を好きだって…優しくて穏やかな私が好きって言うのよ…」
「うん」
優しくて穏やか…そうだよね、その通り。
「違う…!私は優しくない!!ハルは本当の私を知らないの…!ハルの描いてくれたこの素敵な私は私じゃない…!!」
この絵って…美波さんをモチーフにした女神だ。題材は日本神話…多分、木花咲耶姫。
なんて美しくて素敵な、今までのハルの絵の中で一番素敵な花の女神。
「私…昔、恋人を亡くしたの」
なん…!?
「もう私は誰も好きになんてならない。ハルは弟で…弟でいいの…!!」
私は又顔を伏せてしまった美波さんの肩をギュッと抱いた。
呆然としていたのはハルも同じだった。
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