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「美波は僕が嫌いかな」
始まった。
好きか嫌いの二択なら、多分好きだと思うけど。てか、未だに美波さんはハルを弟扱いしてるからなぁ。
私はハルにこっそり呼び止められ、相談があると放課後に以前来た事のあるパン屋さんのカフェに連れてこられた。
「ハルは美波さんが卒業後に東京に戻ったらどう思うの」
「嫌だ、悲しい」
即答ね。
「なら、ちゃんとそれを伝えれば?」
「でも美波は未だに僕を弟扱いだ。美波にはここに入学した日に僕の恥ずかしい所を見られてるし」
私に抱きついて大泣きしたあれね。
「でも大事な人でしょ」
「うん、もう美波無しのこの街は考えられないよ。すごく大事…ずっと僕の傍にいて欲しい」
私に告ってどうする。
「言葉にしないと伝わらない想いもあるよ」
「櫂はどう?」
へ?
「櫂はあまり喋らないでしょ、そこは行動?」
マイダーリンを獣みたいに…確かに一部獣だが。
「必要な事はちゃんと言葉にしてくれるわよ」
もれなく行動も付いてくるけど。
「スタートが悪かったからなぁ…踏み出す勇気が足らない」
ハルが頭を抱えた。
でもハルが雪緒さんへの想いから立ち直れたのって、美波さんがいつも傍にいてくれたからだよね。近くで見ていた私がそれは一番分かってる。
「ごめんなさいって言われたら立ち直れない」
それでも良いから言え。
とりあえず言え…という自分の想いはぐっと堪えて。
「美波さんは今度の帰省で色々決めて来ちゃうよ」
「…だと思う」
だからそれまでになんとかしなさいってお話でしょうが。
「私は何も出来ないんだからね。ハル、あなたがしっかりしなさい」
本当にこればっかりはね。
尚も頭を抱え続けるハルに、私も溜息しか出なかった。
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