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帰宅した櫂に、ハルの事を伝えたら苦笑いしている。まだそんな感じだったのかと。
お盆に吉野に行った時に好きな人が出来たよと雪緒さんのお墓に報告してたから、きっと今頃はなんとかしてると思ったのにと。
「フラれてさえいないのか」
ちょっと櫂。
「まぁハルにその気が無いなら事態は動かん。放っておけ」
「そうだけどね」
「それより年末だ、今回もクリスマス前に帰るから二人の予定を聞いておけ。車か新幹線か、それで決める」
「あ、そうね」
あとでLINEだね。
「ハルは臆病だからな、気持ちは分かる」
分かるの!?俺様に臆病者の気持ちが!?
「意外そうだな」
「い、いぃえ 」
しまった、顔に出た。
櫂が後ろから抱きついてくる。
「お前があの時、自分から俺に抱いてって言わなきゃ俺からは何も出来なかった。お前が何より大事だったから、手を出すなんて最大の禁忌だ」
そうだったのね。
「あんな鴨がネギしょって来るような事でもなければ、俺もハルと同じだ。未だに兄ちゃんをやっていたかもな」
鴨がネギしょって…私は鴨ネギ…
「だから俺は幸せだ。洸、最高」
しっかり口づけて来た。そのままバスルームに連れて行かれそうになる。
「私はもう入ったよ、ご飯用意するから」
だいたい二人だと狭いでしょうが。櫂が舌打ちして大人しくお風呂に行く。
本当にあの時、まだ子供だった私のお兄ちゃん大好きな一心が今のこの時間を作ってくれたんだね。
やっぱり大事な物を得る為にはそれなりの勇気が必要だ。
頑張れ、ハル。
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