212人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
【番外編】バレンタインですが計画はまだしてません
2月。
私、月見里彩葉は焦っていた。
世の中は赤やピンクで溢れていてテンションが上がりそうな雰囲気に包まれているというのに、当日に向けての準備はおろか計画も立っていない。
「ヤバイっ!!」
小さく頭を抱えるお昼休み。休憩室に誰もいないのを良い事にスマホで『バレンタイン 恋人 初めて プレゼント』と思い浮かぶワードで検索しまくっている。バレンタインデーまであと2週間しかない。
「どうしよ、どうしよ。手作りチョコ? 難易度高い? でも『初めては手作りで♡』とか書いてあるよ〜〜〜、もぉ〜〜」
私の手作りご飯は少しの警戒もなく食べてくれるようになった彼氏の歩くんですが、そうなんです! 他人の手作りクッキーを捨てるような人なんです――
お菓子系は歩くんの克服難易度が高いと踏んで未だに作ってない。
いや、一度だけあった。
あの空港で――
アメリカに行く友梨さんと湊さんをお見送りに行ったあの夏、『もしかして克服してくれるんじゃないか』と安易な考えで、結城さんにクッキーの作り方を教えてもらい意気揚々とラッピングした型抜きクッキー。
渡したそれは受け取られる事なく、私の手と歩くんの手によって、ぐしゃりと無惨に砕けてしまった。
あれから半年。
でも思いだせばまだ、手の平にあの時の感触は鮮やかに残っている。
「やっぱりチョコは買おうかな。どこのチョコが好きかな?」
百貨店にでも行ってみようか。きっと有名ショコラティエのチョコレートがきらびやかに並んでいるだろう。
そうだ。とりあえずチョコレートを見よう。
計画も準備もそれからだ!
最初のコメントを投稿しよう!