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「え、待って……、今何捨てた?」
社内のゴミを纏めた大きな透明袋を持って、反対の手でダストボックスを指差す。
「いや、えっと……」
ダストボックスの蓋に手を掛けたまま佇んでいるのは、松岡歩くん。スラリと背の高い松岡くんを見上げるとその整った顔を困ったように歪めている。
「見ました?」
「うん、見ました。ばっちりと」
開口一番『何捨てた?』と聞いたのは私だけど、何を捨てたかはちゃんと見ていた。
だって、それは普通ゴミ箱に入れるようなものではないから。
そう、ゴミではないのだ。
「クッキーだよね? 結城さんからもらった」
「あーー、マジで見られてたんだ」
ぼそっと呟いて頭をわしゃわしゃっとかく松岡くんに向かって、私は身を乗り出すように疑問を投げ付ける。
「え、何で捨てたの? 美味しそうだったじゃん?」
かくいう私も結城さんの手作りクッキーをもらっている。営業部のみんなに配っていたのだけれど、明らかに松岡くんのだけ特別仕様のラッピングだった。
それが示すのは、まあ鈍感じゃない人なら分かる事なんだけど……。
松岡くんにとっては結城さんの明らかな好意が迷惑だったのかな? と考えてしまう。
「僕、無理なんです。手作りとか」
「潔癖なの?」
いるよね、そういう他人が作ったものとか、触った所とか駄目な人。私は全然ヘーキだから理解出来ないけど……。
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