1.春ですが恋は始まりません

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私――月見里彩葉(やまなしあやは)には大学時代から付き合っていた二つ歳上の彼氏がいた。私が就職して一年目は、毎日のように励まし支えてくれた彼。 そんな優しい彼が私は大好きだった。 きっと五年くらい一生懸命働いて結婚資金を貯めたら結婚するだろうと、ハッピーな未来をいつも想像していた。 社会人一年目の私が仕事を覚え、ようやく失敗も減って仕事が楽しいと思い始めた矢先、 彼は新年度から海外赴任となると言う。 彼も付いて来て欲しいとは言わないし、私も付いて行きたいとは言えなかった。 彼が海外に行くと同時に私たちの関係も終わりを迎えた。 お互い好きな気持ちのままに別れた。私はそんな好きの気持ちを他へ向ける事も出来ず、持て余し……。 それから五年。 結婚資金にはならない貯金だけが虚しく貯まっていた。 恋ともご縁がないまま、私は今日も家と会社の往復に勤しむ。
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