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最終回にして意外な真打ち登場なのです!
「アズハールちゃん、今日付けでゲームに復帰しました」
「え! 昼食は揚げパンとシチュー、コールスローサラダだから大丈夫。……あ、夕食ハンバーグじゃないですか! どうします、親方」
「鶏肉バーグだな」
「じゃあ、急ぎで鶏ひき肉発注します」
「蝶ちゃん、予備、検食、保存用で四食分な」
「チョウちゃん? ……って、何ですか? 親方」
「アズハールってなあ、アラビア語で蝶々のことよ」
「さすがです。親方! アラビア語にも精通していらっしゃるんですね!」
敗者復活があるとは。
結局負債が上乗せされる予感です。アズハールちゃん(のお父さんの石油王)からは、まだまだ搾り取れるという算段をつけたわけですね。主催者め、あくどい!
「しかし、納得いかねえ。デスゲームってなあ、開いた側に何の得があるんでい? 実験? 復讐? 道楽か? なんにしても無駄がすぎるだろうが」
昨日「デスゲームってなんでい」と聞かれて勧めておいたラ●アーゲームとバ●ルロワイアルをチェックしたようですね。今の主流は異能バトルかもですが、「異能ってなんでい」と聞かれても上手に答えられる気がしなかったので、その存在は伏せることにしたのです。
「まあ何にせよ、人同士を争わせようなんて輩は地獄行きよ。ここのマスターとやらも、ろくなもんじゃねえ」
「でも、ほら、それだけの地位とか財産とか、なんか色々築いてる人なんじゃないですか? 僕はちょっと憧れちゃいますけど」
「いいや、築いたもんの使い道を間違ってるだろうが。そもそも悪趣味だな。他人の人生を糞みてえに扱ってやがる」
ありゃ、珍しい。上下関係に厳しい哲さんが、結構言いますね。やっぱりあれですか? 食べることは生きることですから、生きることを蔑ろにする人は許せないんですかね。
「大体、あれだろ? マスターってなあ、しれっと参加者にまじって、場をひっかき回してたりすんだろ? いつ検食持って行っても校長室にいねえってなあ、そういうこったろうよ」
違いましたね。どうやら、検食しないのを根に持ってる感じなのです。
「あ、八百屋さん来たので、僕出てきますね」
「参加者の中でも序盤から大して目立たず小物感漂うのに、なぜか終盤まで残ってる奴な。あと、ガキか、やたらガキっぽくふるまう奴が、実はIQ250とかいうあり得ねえパターンだろ? どうせ」
「そういえば、リモート面接のとき、白覆面だけ画面から遠ざかってる感じしましたね。小顔効果狙って遠ざかってるのかと思ってましたけど、あれって、単に小さいだけだったのかも」
ガシャン
あ、野菜の下処理し始めた太郎くんが転んだ。食材を転がしてないと良いけど。
「キャラ的にはあれだ、ここで言うと太郎がドンピシャだな。毒にも薬にもならねえ感じだ」
「なるほど。小動物系で無害な雰囲気を終盤で一転させて、周囲を戦慄させるんですね!」
ガタン ガラガラ ピシャ! ダダダダ…
あ、なんか太郎くんが廊下を走り去ってった。
「やっぱりな」
え? え? なんですか、これ? 思わずオロオロしてしまいましたが、哲さんは平然と仕事始めようとしています。ちょっとついていけてません。
「あいつがここの校長よ」
「え!? なんでわかったんですか?」
「アズハールが女だって、誰が言った? 名簿には性別なんてねえのに、あいつは最初からアズハールに『ちゃん』付けしてやがったのよ」
そういえば、そうかも。第一話参照ですね。
「名前だけで性別がわかるほどアラブの文化に明るいのかってえと、そうでもねえ。その証拠になあ、アズハールってのは蝶じゃねえ。花って意味よ」
ひっかけ問題でしたか。チーフえげつない!
「ゲーム自体の話は率先して楽しんでやがるくせして、ゲームマスターの話題がでると、さり気なく会話からフェードアウトするしよ」
第二話参照ですね。
「そんな…… まさか、太郎くんが……
じゃあ、ここで検食してたってことですね!」
「おうよ。なら、さっさと言えって。なぁ! 無駄に腹立てちまったじゃねぇか。しゃらくせえ」
太郎君、厨房に潜入してどうする気!? あ、あと、人手が足りないから早く戻ってきて。哲さんが私に手伝わせようと目を光らせてるけど、無理なのです。私、調理実習以外で包丁持ったこと……
【完】
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