SPELL 1

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SPELL 1

 彼女は爽やかな風が舞い込むそこで、ひたすら本を読んでいる。  読書は知識の宝庫。知らないものがそこには書かれていると思うだけでわくわくするものだ。読んでも、読んでも、まだ読み足りない。  グリューン魔法学校の図書館。在学中にほとんどの本を読み終えてしまい、わくわくはいつの間にか物足りなさに変わっていた。  それでも図書館という雰囲気が好きで毎日訪れることが日課だ。  古くなった図書館には、やはり古い本棚と破けそうな本ばかり。歩いていると軋む音までする。紙を捲る音や匂い、窓の外から入ってくる葉の擦れる音や鳥の囀り。  シエルはその全てを愛していた。だから今日という日に、図書館に来たのは至極当然のことである。この後の予定など考えていない。  一人しかいないその部屋で、まるで舞台にでも立つ女優のように歩き始める。窓から入ってきた風で、白を基調にした制服が揺れた。
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